銀行、金融、証券、保険におけるデジタルトランスフォーメーションの推進:「ビジネス利用に適した」データかどうか?
インターネットが登場して以来、銀行、金融、証券、保険の企業(BFSI)は、非常に大規模な変革を強いられてきました。モバイル、ロボット、人工知能(AI)、機械学習(ML)、クラウドコンピューティングの進化によって、BFSI全体のビジネス基盤が変わりつつあります。
スマートフォン技術が発展し、先進国では物理的な銀行支店やATMの代わりとして活用されるようになりました。また、発展途上地域で銀行口座を開設できていなかった数千万人の顧客にサービスを提供することができるようにもなりました。さらに、保険業界では引受から請求処理まで、手動のプロセスで行われていたことがAI/ML対応のソリューションに代わり、ビジネスコストの削減とカスタマーエクスペリエンスの改善につながっています。そして、新たなクラウドネイティブのソリューションをデータや応用分析に活用することで、デジタル面におけるカスタマーエクスペリエンスの強化のほか、バックオフィスの効率向上、リスクの軽減、イノベーションのサポートなどに役立てることもできるようになりました。
こういったイノベーションへの継続的な投資によって、昨今のBFSI業界が直面している以下のような要件の達成・課題の解決につながります。
● カスタマーエクスペリエンスの向上:基幹業務、デジタル、マーケティング、カスタマーサービス、およびカスタマーエクスペリエンスの各チームにまたがるBFSIの経営幹部が一丸となって、パーソナライズされたサービスの提供に重点を置き、カスタマーエクスペリエンスを向上させることが求められます。
● ウォレットシェアの拡大:既存のビジネスライン全体および既存の顧客からのクロスセルをサポートできるような、革新的なソリューション開発、価格設定の見直し、製品提供の需要が高まっています。
● 規制への準拠:昨今では、既存の規定が強化されつつあるほか、新たな規制も誕生しています。例としては、ESGの取り組みを目的とした気候変動報告、BCBS239、OFAC/AML/BSA、そして多くの国で普遍的な規範となったGDPR以降のデータプライバシーに関する規制などが挙げられます。
● リスクマネジメントの強化:銀行や保険業において重要なことは、リスクを管理し、そこから利益を得ることです。しかし、合併と買収、地政学的な事象、パンデミック、気候変動などの影響により、システミックリスクの特定、管理、阻止が困難になっています。
● ビジネスの敏捷性の向上:常時接続が実現し、24時間年中無休で稼働している昨今の世界では、ビジネスのサイクルがかつてないほど高速になっています。多くの組織がレガシーシステムをクラウドへと近代化し、既存のビジネスプロセスを自動化することで時間的制約のあるイベントへの対応を行っています。
BFSI業界では、現段階および今後の投資によって成功を収め、価値を得るため、かつてないほど「ビジネスでの使用に適した」データを必要としています。しかし残念ながら、すべてのデータが同じというわけではありません。ビジネス利用に適したデータには、以下のような特性が挙げられます。
用途に適したデータ |
定義 |
アクセス可能 |
● いかなるシステム、場所、形式、構造、ボリューム、レイテンシにも対応し、相互のアクセスが可能である |
有効性 |
● ビジネス参考データ、顧客の連絡先情報、顧客関係プロファイルなど、検証および承認されたデータを保有することを含む |
透明性 |
● データがどこから来て、どこに保存され、処理され、消費されているかが理解できる |
クリーン |
● スペルミスや同じ情報の重複といった欠陥のないデータで構成されている |
わかりやすさ |
● ビジネスユーザーが既存データのビジネス上の定義や使い方を理解できるようにすることを含む |
保護 |
● 個人情報(PII)の識別、分類、追跡、保護を行い、データ侵害を回避し、データプライバシーに関する規制に準拠する |
データがビジネス利用に適していない場合、企業にどのような影響があるか?
BFSIでのデータがビジネス利用に適していなかった場合、さまざまな影響が生じます。どの企業にも言えることは「従業員1人あたりの純利益」が減少するということです。そのほか、長年にわたってインフォマティカのお客様から挙がった声をご紹介します。以下をご覧ください。
● ネットプロモータースコアの低下
● 顧客からの自発的な解約率の上昇
● マーケティングキャンペーンの不調
● 顧客オンボーディングプロセスの遅延
● 顧客の獲得コストの増加
● 販売担当者の離職率の上昇
● コンプライアンスコストの増加
● 信用取引の不履行による財務リスクの増加
昨今、ビジネス利用に適したデータを得られにくい理由
データの管理、運営、保護は複雑な業務です。これらを正しく行うには、適正なスキルセット、ガバナンスポリシー、プロセス、およびテクノロジーが求められます。それぞれの要素がひとつでも欠落していると、ビジネス利用に適したデータを得ることはできません。さらには、データの管理、運営、保護だけに使用されるテクノロジーでは、経験豊富な従業員不足への対応や、必要なデータの選別、成功をつかむための要因や方法を定義することもできないのです。
とはいえ、既存のシステム、インターフェース、フォーマット、構造、レイテンシの複雑さを処理できるテクノロジーソリューションは重要です。データ統合、アプリケーション統合、データ品質、マスターデータマネジメント、データガバナンス、データカタログのソリューションは以前から存在しています。技術的に豊富なリソースを持つ大企業は、これらのニーズに対応するカスタムソリューションを構築し、そのほかの企業は従来のツールに投資してきました。
しかし、昨今BFSI業界で扱われているデータは、最新かつクラウドやAI/MLを活用したものです。残念ながら、従来のソリューションではBFSI業界が現在保有するデータの量、多様性、速度に対応できません。今こそ、今日の銀行、金融、証券、保険業界におけるデータの管理、ガバナンス、保護の方法を最新化するときです。ここで重要な役割を果たすのが、インフォマティカのIntelligent Data Management Cloud (IDMC) です。IDMCは、すべてのユーザー、データに対応する業界初のAI搭載データマネジメントソリューションであるCLAIRE®を搭載しており、データ統合、アプリケーション統合、データガバナンス、メタデータマネジメント、データ品質、マスターデータマネジメントを可能にする包括的なプラットフォームです。
IDMCを活用することで、BFSI企業はクラウドへの新たな投資が過去のオンプレミスシステムと連携し、あるクラウドのデータを別のクラウドでも利用できるようになります。ハイブリッド企業全体にわたって、データリネージのビューが普遍的であり、機密データが把握、追跡、保護されていると、データマネジメントとデータガバナンスが適切に行われます。そして、すべてのデータ市民、データアナリスト、データスチュワード、データエンジニアが利益を得ることができるようになるのです。
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本ブログは2022年5月8日のPETER KUによるAdvancing Digital Transformation in Banking, Financial Services, and Insurance: Is Your Data “Fit for Business Use?”の翻訳です。