データメッシュとデータファブリックを実現させるデータガバナンス
本ブログでは、欠かせない要素であるデータガバナンスについてご説明します。
データガバナンスは、データメッシュやデータファブリックのアーキテクチャを成功に導くための必須条件と言えるものです。 これまでのブログで述べたように、データスチュワードシップ(案内管理責任)は適切なデータガバナンスの中核を担う存在です。また、データスチュワードシップ(案内管理責任)は、企業データの管理を、そのデータに最も近い立場の人々へ適切に委ねるものでもあります。
スチュワードシップは、データメッシュの主幹となるものです。データファブリックにおける1<つの目標は、データを民主化すること、つまり、すべての人がデータを把握できるようにすることです。それによって企業は、説明可能な関連資料データを十分に活用できます。「適正な」人々に「適正な」データを用いて「適正な」ことをさせるのは、必ずしも容易ではありません。それには、利害関係者、権限付与、認識、報酬に関する明確な定義が必要です。
成功要因としてのデータガバナンス
データガバナンスは、企業が変化するビジネス環境や規制環境にうまく適応しようとする際、とても重要な役割を担います。データガバナンスを単にコンプライアンスという狭義の目的だけに限定するのは短絡的な考えです。企業はデータガバナンスの全体的な価値にビジネス目標の達成を組み込んで考えなければなりません。そして同時に、規制、ポリシー、標準などへのコンプライアンスを促進する必要があります。データガバナンスは、データメッシュとデータファブリックの鍵となるものです。ここからは、ビジネスを成功に導くデータガバナンスの特性をご説明します。
指揮を取る
ガートナー社は、「データファブリックを実行する場合は、データマネジメントインフラストラクチャの設計を発見、推測、提案し、データオブジェクトを検証するためにデータの継続的な使用と再利用を行う。これを実現するには、複数の業界にわたる多くの経験が必要となる」と述べています。新しいアーキテクチャを検討する際には、組織の現在のデータ構成を注意深く検討する必要があります。さらに、最新化に向けて適切な計画を立てることも大切です。
データファブリックは、データの使用事例を認識・追跡し、テクノロジーの再利用をサポートします。また、データ製品を検証し、標準化する能力もサポートしています。データメッシュは、これらのデータ製品の定義、作成、使用について正式に説明責任を負う担当者を明確にします。データガバナンスは、これらのデータファブリックとデータメッシュの目標を実現するための核となるものです。
データファブリックは、拡張したデータマネジメントとクロスプラットフォームの編成を促し、手動による設計、展開、メンテナンスの労力を最小限に抑えます。ガバナンスモデルは、影響力、所有権、権限委譲を明らかにします。また、データメッシュとデータファブリックの資産を管理し、データへのエンゲージメントとデータ利用を最大化する機能も提供します。
影響力を行使し、データコミュニティを強化する
私の著書”Non-Invasive Data Governance: The Path of Least Resistance and Greatest Success”(非侵襲的データガバナンス:最小の抵抗で最大の成功へ繋がる道)では、データガバナンスを「データマネジメントに対する影響力の実行と強化」と定義しています。データ環境のガバナンスを実現するには、ユーザーやコミュニティが標準に従うように影響を与える必要があります。これには、品質、ルール、保護ガイドラインが含まれます。また、業務上の価値を提供するために、データを簡単に利用できるようにする必要もあります。
データファブリックアーキテクチャには、次世代のエンタープライズデータマネジメントを組み込む必要があります。具体的には、データガバナンスに向けた実用的かつ段階的なアプローチが求められます。また、物理的な制限を緩和し、データへの均一なアクセスを提供することも大切です。このように複雑さを軽減するためには、一貫性と標準化が必要です。そして、そのために求められるのが、データの定義、作成、使用基準に従って説明責任を果たすことです。
2021年10月、ガートナー社はテクノロジーのトレンドの観点から、(概要をまとめると)「データファブリックを実装している組織は、個々の分離されたデータマネジメントツールやメタデータプラットフォームをガバナンスの効いたツールと統合プラットフォームに置き換え、より幅広くデータとメタデータを共有するべきである」と述べました。これらのツールを導入するには、標準を定義して従うこと、影響力を軸とすること、そして一貫性をもたらすものであることが求められます。
基準を確立する
データとメタデータを共有するには、これらの定義、作成、使用に関するルールと原則が必要です。ルールと原則は、組織が一貫してデータを提供できるようにするための標準になります。説明責任、プロセスの方法論、使用されるテクノロジーの正式な基準の詳細については、本シリーズのブログ第2回目を参照してください。
データメッシュアーキテクチャは、説明責任に向けた行動フレームワークを提供します。これは、ビジネスドメインの所有者と、データ内における特定のドメインまたはサブジェクト領域に対する彼らの責任に焦点を当てることによって実現されます。データメッシュガバナンスには、組織内で分散されたエンティティに対し、ビジネスドメイン所有者が定義したエンタープライズ標準の開発が含まれます。データガバナンスは、データを管理することとであると同様に、人々の行動を管理することでもあるのです。
データファブリックアーキテクチャを実装する組織は、さまざまなデータリポジトリを仮想的にオーバーレイする標準的なテクノロジーを提供することを目指しています。また、すでに分散し、独立しているツールやシステムに関する個々の要件や、潜在的に非標準の要件も考慮する必要があります。
ベストプラクティスを確立する
データメッシュとデータファブリックを効果的に管理するには、人材、プロセス、テクノロジーに関するベストプラクティスを確立する必要があります。また、ビジネスドメイン所有者を一貫してオンボーディングすることも必要です。これによって、アーキテクチャ全体にわたり、ドメインに関連付けられたデータを効果的に管理できるようになります。これらのベストプラクティスを通して、ビジネス指向のアクションとガバナンスプログラムを効果的に結び付けることが可能になります。
ガイドを伴う研究所のコラボレーション
データメッシュやデータファブリックアーキテクチャの構築を成功に導くには、人材やその他のリソースの連携・協力が不可欠です。データを最大限に活用し、組織を前進させるためには、こういったリソースをどのように管理するかが非常に重要となります。
(より高度なガバナンスモデルを備えて)統合・地域化・分散化された管理モデルは、非常に効果的な結果をもたらします。また、説明責任を管理し、ガバナンスの行き届いたデータメッシュ環境・データファブリック環境を提供するのにも役立ちます。データガバナンスは、データメッシュの司令塔となるものです。データファブリックは、信頼できるデータから価値ある洞察を引き出すために、組織の能力を向上させることに重点を置いています。これにより、データからビジネスにおいてより良い意思決定を行うことができます。
データガバナンスに対して最新のアプローチをとることは、データユーザーの強力な支えとなります。しかし同時に、ユーザーがデータに関する知識量を増やし、積極的に関与することも求められます。データへの理解と標準を向上させるために、ユーザーが歓迎され、知識を共有し、貢献することで報われると感じられるようなコミュニティ作りを心掛けることが非常に肝要です。
まとめ
本ブログでは、データメッシュとデータファブリックの取り組みを管理する際の本質に焦点を当てました。そして、ガバナンスとガイダンスを提供するためのベストプラクティスについて概要をいくつかご説明しました。
昨今、デジタルトランスフォーメーションやビジネスの変革において、データガバナンスが重要な役割を担っています。また、価値のあるビジネスや技術資産としてのデータを活用する重要性も高まっています。
本ブログを通して、データガバナンス、データメッシュ、データファブリック間の関連性と依存関係についての理解を深めていただければ幸いです。
本ブログは2022年6月6日のROBERT S. SEINERによるData Governance as an Enabler for Data Mesh and Data Fabricの翻訳です。