【パートナーブログ:B-EN-G】MDM推進に立ちはだかる5つの壁~その5 目的設定~
こんにちは。インフォマティカ・ジャパン編集部です。パートナーブログシリーズ、続いては東洋ビジネスエンジニアリング株式会社様からです。
今回はMDM導入で直面する5つの壁のうち、特に肝になる「目的設定の壁」について寄稿頂きました。
一体、どんなお話なのでしょうか!?ご一読下さい。
MDM(マスタデータマネジメント)導入で直面する壁って何でしょう?
様々なシステムと絡む必要のあるMDM導入なら、まずは「組織」という言葉を思い浮かべることでしょう。あとは予算を取りにくい等も壁になることがあります。
本稿では、「組織・体制の壁」を含む5つの壁のうち、特に肝になる「目的設定の壁」について触れたいと思います。
■導入で乗り越えるべき代表的な5つの壁
弊社東洋ビジネスエンジニアリングは、データマネジメント分野に力を入れており、筆者もプロジェクトマネジャーとして複数のMDM導入現場を経験してきました。
振り返ってみて、MDM導入で乗り越えるべき代表的な壁は次の5つだと感じています。それは、「組織・体制の壁」「調達の壁」「時間の壁」「並行するプロジェクトの壁」そして「目的設定の壁」です。
いずれの壁もなかなか高くて頑丈で乗り越えにくいものです。
MDM導入企画・検討中なら投資対効果の算出やツール選定に苦戦する「調達の壁」に悩まれている方も多いと思われますが、本稿ではMDM導入の目的が不明確である事により直面する「目的設定の壁」について特にIT部門が直面しがちな壁の事例と解決のヒントをご紹介したいと思います。
■目的設定の壁
壁事例:その1「対象マスタが定まらない」
ある企業から「品目マスタの統合を考えている、しかし、統合の範囲が定まらない」と相談がありました。そこで、「品目とは?部品、半製品、販売品?どれを指しますか?それによって統合範囲も変わってきますが・・・」とお聞きすると困った顔をされました。
目的が明確になっていないと、管理対象とするマスタの範囲が定まりません。「品目」と言っても、業務によって対象となるデータが意味するものは様々です。しかし、例えば、販売品のデータを統合し売上を分析して販売向上に役立てる、という目的があれば、品目マスタの中でも先ずは販売品を対象にすればよいという判断ができます。
壁事例:その2「良い悪い判断ができない」
「将来のビジネスモデルも見込んでデータモデルを作成したが良い悪いが判断できない」というご相談を受けたこともあります。ITチームが企業の将来を考えて取り組まれた姿勢には感動いたしました。しかし、データモデルは「外国の導入企業をお呼びしてお話を聞いた」「同業他社から取り寄せして参考にした」とのこと。そこで「事例企業と同じになりたいのですか?」と問い返すと答えは当然「違います」でした。
解決したい業務課題が明確になっていないために、作成したデータモデルが適切かどうかを判断できない典型的な例でした。その後、「自社にとってはどうか」ということを基軸にきっちり整理し、自社に適切な形にし直しました。
将来のビジネス変化をどこまで見込んでおくかは確かに難しいです。しかし、解決したい業務課題、経営課題を踏まえた目的が明確であれば、少なくとも目的を満たしているかどうかは判断できます。
壁事例:その3「システム観点のみ」
同種のマスタが各システムでバラバラに管理されている状況で、システム観点でのみ統合しようとして、効果が説明できないというご相談です。一番多い例といっても過言ではないでしょう。MDMシステムを導入して一元管理することで、運用・保守コストを下げる効果があると思われがちですが、MDMの導入効果はMDMで統制されたデータを利用する業務側でこそ真の効果を発揮します。
どういった経営課題を解決するか、MDMシステム単体で効果は説明しにくいのです。「調達の壁」の解決方法にもなりますが、MDM導入の先には業務課題の解決目標を設定する必要があります。
目標設定の壁:解決のヒント
これら3つの事例に共通する壁を乗り越える解決のヒントとしては、MDMシステムの導入は目的ではなく手段であることを踏まえ、経営課題と結びついた目的を設定するということです。
<目的例>
- 各業務システムに登録されている顧客情報を横串で管理し、マーケティング活動や接客に役立て売上向上に役立てる。
- 品目データ統合による、正しい在庫数量の把握、集中購買によるコスト削減
- 取引先データの重複排除による、債権債務の適正管理
- システムリプレイスの効率化によるコスト削減などが挙げられます。
経営に近い位置にあるIT部門だからこそ、自社の将来を見据えた自社に合致したMDM導入の目的設定ができると思います。これが定まると、5つある壁の乗り越えた先が見えてくることでしょう。
そして、先陣を切って壁を越えメンバーを引っ張り上げるリーダーと、どの方法で登ればよいかというアプローチの仕方、それを指南する経験者がいれば、壁も越えられるはずです。
リーダーは、組織間の利害関係を調整し推進する強力なリーダーシップが求められます。MDM導入の推進には、様々な組織(社内部門、他プロジェクト、社外パートナー・・・)が関わってきますので、組織間に発生したコンフリクトについて調整(説得)できる強力なリーダーシップが必要となります。また、MDM導入の目的は調整(説得)における重要な材料となります。
アプローチは、経営課題からのトップダウンと現状分析からのボトムアップ、両方からのアプローチが必要です。テーマによって、どちらに比重を置くかは検討の必要があります。結果として解決策としてのMDMが目的に紐付くことが重要です。
弊社の経験としては初めから欲張らずに、「小さく始めて、大きく育てる」のが設計開発にかける時間短縮に役立つと考えています。
最後に、経験者です。
MDM導入は、やってみないとわからないことがたくさんあります。
構想策定アプローチ、要求機能選定、ツール比較、プロジェクト推進方法論、など経験者の活用は不可欠と考えます。
具体的には
- やりたい事をMDMのデータモデル・機能要件に落とすことができる
- 各種パッケージやスクラッチ開発に関する知識を保有しており、ソリューションの比較検討を実施できる
- MDMプロジェクトの豊富な実績と、プロジェクト推進のための方法論を保有している
- プロジェクト全体を通して時間をかけるポイントを、ユーザー状況を加味して適切に取捨選択、リードできる
- このような条件を満たした経験者がいれば、高くて頑丈な壁もリーダーと一緒に登れそうな気がしませんか?
本稿がMDM導入を企画中または、真っ只中にいる方に参考にしていただければと思います。また、経験者として弊社にご相談いただければ幸いです。
筆者:東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
ソリューション事業本部データマネジメント部
プロジェクトマネジャー 松下 卓
(本稿は2018年3月7日 JDMC主催「データマネジメント2018」の講演を抜粋編集したものです。
講演レポートおよび資料DLはこちら)