企業がマスターデータを管理しなければならない理由
マスターデータの厳格な管理は、すべての企業にとって必要不可欠な課題です。ここではマスターデータを管理すべき理由と、そのアプローチについてご紹介します。
マスターデータとは?
マスターデータとは、企業で扱うデータの基礎となる、商品、顧客、仕入先、組織などの情報のことです。それぞれ商品マスター、顧客マスター、仕入先マスター、組織マスターなどと呼ばれます。
マスターデータは、固定的なデータです。たとえば、顧客マスターの中の顧客番号「00001」という顧客情報にはその顧客の顧客名、住所、電話番号などが記載されており、もしも変更があった場合は更新され、以前の情報は削除(もしくは、過去履歴として保持)されて、常に最新の状態が保たれます。内容が異なる複数のマスターデータが存在するということは、本来あってはならないことです。
また、単体のアプリケーションでマスターデータの整合性や品質、信頼性を確保するために管理が必要なのはもちろん、複数のアプリケーション間においてもそれらを統合的に管理しなければ、様々なリスクが発生してしまいます。
このアプリケーション横断でマスターデータを管理することを、マスターデータ管理(Master Data Management=MDM)と呼んでいます。
マスターデータを管理しないと発生し得るリスクとは
マスターデータの中でも、商品マスターや顧客マスターは特に管理が難しいデータです。マスターデータの管理が不十分だった場合に生じるリスクには次のようなものがあります。
◆システム間のデータ連携が困難になる
マスターデータはアプリケーションごとに定義された方言とも言えます。異なる方言をもつ複数のアプリケーションをまたいで会話、すなわちデータ連携をする場合、方言のままでは会話が成立しません。相手が理解できる形に翻訳する必要があります。
具体的には、マスターデータのコード体系やデータモデル、粒度の違いを吸収する変換処理を行ったうえで、データ連携を行うことになります。
連携対象のアプリケーションが少ない段階では個別の翻訳で対応できますが、アプリケーション数が増え、マスターの種類や複雑性が増すにつれて、個別の翻訳で対応し切れず、マスターデータの集配信や同期が困難になってしまいます。
◆データの分析も困難になる
マスターデータがバラバラに管理されている状態では、データの分析もままなりません。たとえば、グローバルで販売管理システムが複数存在し、それぞれ方言で管理=同じ商品を異なる商品コードや名称で管理していると、「この商品がグローバルのどこで、いつ、どれだけ、いくらで売れたのか?」を横串を通して集計することもできません。
顧客マスターも同様で、「ある法人取引先のグループ全体に対して、現在どれだけの取引実績や見込み案件、売掛債権があるのか?」を即座に集計できる企業は少ないのではないでしょうか。
このような状態では、グローバルや事業横断での収益性分析、与信管理を的確に行うことは非常に困難です。
これらの課題は、いずれもマスターデータの分散化と個別管理に起因しています。
とはいえ、全世界の言語を廃止してひとつの言語に統一するのが不可能であるのと同様に、既存の各アプリケーションで使用されている各種マスターデータを統一し、洗い替えるのは現実的に不可能です。また、あらゆるすべての業務をひとつのアプリケーションに統合することもできません。
3.どのようにマスターデータを管理すべきか?
では、多くの既存システムと方言が乱立する状況において、どのようにマスターデータを管理すればいいのでしょうか。その解決策となるのが、特定のアプリケーションに依存しない形、すなわちアプリケーション層ではなくデータ層で統合管理するアプローチです。
既存のアプリケーションはそのまま運用しつつ、各々のマスターデータを収集し、関連付けて一元管理することで、上述のような課題を解決することができます。これを効率的に実現するのが、MDM(Master Data Management)ソリューションです。
MDMソリューションの機能
MDMの機能は多岐にわたりますが、代表的なものとして以下が挙げられます。
- 多対多の方言間や、各種方言を標準語に翻訳する辞書(クロスリファレンス)管理
- 収集したマスターから抽出した、最も信頼性の高いマスター(ゴールデンレコード)の管理
- マスターデータの登録、更新、削除などのメンテナンス
- 信頼性や品質の高いマスターの集配信や双方向同期
- 業務ユーザーへの包括的な360°ビューの提供
インフォマティカの「Informatica MDM」は、柔軟なプラットフォーム型のマスターデータ管理ソリューションです。特定のアプリケーションやパッケージに依存せず、マスターの種類にも制限はないため、企業ごとに異なる固有の要件に最適な形で対応することができます。
また、項目の追加などのデータモデルの変化や、管理対象マスターの拡張を前提とした設計となっているため、大きく考え、小さく始めて、速く育てるアプローチも可能です。
マスターデータの役割や機能、事例はこちらからもご覧いただけます。
さらに、オンプレミス環境のみならず、クラウドも含めたハイブリッド環境でデータ連携をしようとする場合は、状況はより複雑になってきます。連携要件が複雑で各種アプリケーションやSaaSに接続できないケースもあるでしょう。また、専任の担当者や技術者を確保するのが難しいのも企業活動の現状です。その場合はぜひ、Intelligent Data Management Cloudをご検討ください。クラウド/オンプレミス問わず、あらゆるデータを連携、同期する高性能なクラウドデータ統合ソリューションで、様々な悩みを解決します。