ビジネス用語集:用語の有効化
あなたの組織では、用語の定義に関する悩みはありませんか?承認に至るまでのプロセスがボトルネックになっていないでしょうか?そのような場合は、データガバナンスの運用モデルを更新する必要があるかもしれません。
状況:
あなたは、特定のドメインに関するデータ所有者として任命されました。ビジネス用語集にアップロードするために5つの用語の定義・承認を行う必要があります。
用語の定義を確認するために、関係者からデータガバナンス評議会へ出席し発表するよう求められました。あなたやデータスチュワード(管理/案内人)は、各用語それぞれの適切な説明ができるよう、多くの時間とエネルギーを費やしました。そのため、評議会では自信を持って発表を行ったものの、反対する意見の集中砲火を浴びることになります。
マーケティングチームは、あなたの定義が自分たちの考えと一致していないと主張します。営業チームは、その定義は自分たちのチームで機能するものではないと述べ、財務チームは独自の定義を提示してきます。
結局、あなたの考えた定義は承認されず、会議を離れることになります。
さて、残念ながら、こういった状況は非常に頻繁に起こりうることであり、多くのお客様がデータガバナンスプログラムの立ち上げに「失敗」したと感じて諦めてしまう主な要因となっています。
「定義の麻痺」
ビジネス用語集は、一般的に使用される用語に業務的な意味合いを付加し、組織内での統一性や標準を明らかにしたものです。ビジネス用語集が完成していると、強力な投資収益率(ROI)を得ることができます。そのため、データガバナンスの取り組みでは、ビジネス用語集の優先度が高くなる傾向にあります。
論理的な観点から考えると、この用語集作りは最初に取り組むべき作業のように思えます。役割や責任が明確に定義されているデータガバナンス運用モデルがある場合は、その通りです。
しかし、所有権や責任を割り当てる運用モデルが確立されていない場合は、いわゆる「定義の麻痺」状態に陥ってしまいます。定義の麻痺とは、特定の用語に対する定義がまとまらず、結果として定義化することができないことを指します。
定義の麻痺が起こりやすいのは、(上記の例で述べたように)さまざまな部門にわたってさまざまな意味を持つ可能性のある用語に対し、複数の人が単一の定義に同意するよう求められた場合です。
では、どうすれば「定義の麻痺」を回避できるのでしょうか。
ビジネス用語集/ビジネス用語
ビジネス用語集は、組織内の重要な概念を定義するビジネスの用語やポリシーをまとめてオンラインで確認できるものです。
ビジネス用語は、組織内のビジネスユーザーと関係性のある概念を定義し、そのビジネスで用いられる表現にした単語・フレーズを指します。ビジネス用語には、名前、説明、使用法などのプロパティが含まれ、用語集の利用者は、ビジネス用語の情報を通してそのビジネスの概念、要件、定義を理解します。
ビジネス用語は、そのビジネス自体によって定義される必要があります。大抵の組織では、用語に対して「誰」が責任者なのかを定義する運用モデルがない場合がほとんどです。その代わりに、時にはDG評議会などを通して、組織内におけるグループ単位で独立した定義づけを行う場合があります。こういったアプローチは、さまざまな業務領域にわたるすべての人がその定義に「同意」することが前提になります。
しかし、そういった大規模なレベルでの同意はほとんど実現しません。各領域には用語に対する独自の解釈があり、それが「定義の麻痺」につながってしまうためです。
定義の麻痺を回避するために
データガバナンスの運用モデルを有効にし、各レベルの境界を明確に定義した役割・責任の位置づけを行うことで、定義の麻痺を回避することができます。
データガバナンス運用モデルの有効化
以下は、データガバナンスの運用モデルの例です。
上位は組織全体の戦略的な面を考慮するグループであり、評議会、役員会、スポンサーなどが含まれます。データガバナンス運用モデルの下位に位置付けられるグループは、より部分的な方策に関する作業の多いデータスチュワードや所有者が含まれます。
このモデルは、データガバナンス評議会などの上位の人材を、実務的な作業ではなく戦略、計画、ロードマップの進捗に集中させることを目的としています。
次の表は、データ所有者、データスチュワードの役割を示すRASIC(Responsible, Accountable, Support, Informed, Consulted)をまとめたものです。
この表を通して、例えば「ビジネス規範の定義と維持」についてはデータスチュワード(管理/案内人)が実行面での責任を負う立場であり、データ所有者には説明責任が生じることがわかります。
注:データ所有者は、定義を公開する前にデータガバナンス評議会から承認を得る必要はありません。言い換えれば、あなたが「データ所有者」である場合、承認に関する責任もあなたにあるのです。
また、ひとつの用語に複数の意味が含まれている可能性もあります。このような場合は、その用語に対する企業レベルの定義を1つ作成し、業務部門や部門のコンテキストをサポートするサブの用語・定義を追加することをお勧めします。
以下の表では、「売上」という言葉を含む用語に対する部門ごとの定義を表した例です。各部門によって独自の定義がありますが、「売上」の最終的なオーナーは財務部であり、定義づけの最終決定権を持っていることがわかります。
この場合は、財務部によって提供された定義が企業として承認済みの定義となります。
このようなアプローチはすべての用語に有効とは限らず、審議会や運営組織の承認が必要な場合もあります。しかし、それはあくまで例外のパターンであることをご留意ください。
公開された用語の更新
定義の麻痺は、「オーナー」の立場にいる人が用語の定義に悩んでいる場合にも発生する可能性があります。こういった状況は語彙や表現に自信がないか、あるいは単に「最終的な」意思決定を下す自信がないときに起こりがちです。
まず安心していただきたいのは、ビジネス用語集は簡単に更新できるため、定義を過度に分析する必要がないということです。
さらに、たとえ自分がオーナーの立場であっても、他のユーザーからフィードバックを得て、後でその定義を修正することも考慮したうえで用語を公開するのが一般的です。
以下の画像で示されているように、ビジネス用語集にはユーザーのフィードバックを反映できる変更要求のワークフローがあります。こういった優れた機能を利用することで、定義の検証を行うことができます。
変更要求はオーナーに直接送られ、検討や承認が行われるので、とても分かりやすい仕組みになっています。
まとめ
有効なビジネス用語集を作成するカギとなるのは、役割・責任を早期に確立することです。
これを行うことで、以下が実現します。
- 定義の承認、ワークフローなどに関連する混乱を減らす
- 不要なボトルネックを生み出す煩雑な作業を減らす
- データ要素の公開を促進する
最終的な目標は、ビジネスをサポートできる用語を定義し、アップロードすることだということを忘れないでください。ビジネスへの反映は、早ければ早いに越したことはありません。
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本ブログは2022年6月2日のNATALIE GREENWOODによるタイトルBussiness Glossary: Term Enablementの翻訳です。