失敗しないデータガバナンスのススメ ~最初のプロジェクトの見つけ方とDACIフレームワークの活用

最終公開日 : Dec 05, 2022 |
インフォマティカ編集部
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データガバナンスプログラムは一夜にして成し遂げられるものではありません。

長期的なプログラムへと発展させていくためには、妥当な期間内に投資効果(ROI)を実現できるようなプロジェクトを積み重ねながら、データガバナンスの価値を証明し、範囲を拡大してゆくアプローチが最善の戦略です。

 

 

最初に着手すべきプロジェクトとは?

小さなプロジェクトから始めて、その成功体験をベースに次のプロジェクトへと順次拡張すれば、データ主導のデジタルトランスフォーメーションを推進する基盤を構築し、ビジネスのあり方を根本から変革することができます。

 

最初のプロジェクトには、経営幹部の支持が得られる業務上の優先課題を選択するのが適切です。

次の質問表を使って、貴社の優先課題と具体的な問題点、支援者となり得る経営幹部を明らかにしながら、プロジェクトの範囲を絞り込んでいきましょう。
3番目や4番目の優先課題であっても、最短の期間で最大の価値を獲得できるのであれば、それらの優先課題に焦点を当てることで、より大きな効果を実現できる可能性があります。

  • 貴社の業務上の優先課題は何ですか?(例:顧客中心のビジネスモデルへの転換)
  • その優先課題の支援する経営幹部は誰ですか?

データガバナンスプログラムを成功させるためには、支援者の存在が欠かせません。プロジェクトと利害関係のある(そして恩恵を受ける)経営幹部の支援を取りつけることが重要です。

 

  • 例えば、顧客データを改善してクロスセルとアップセルを高めることが優先課題だとすれば、販売責任者/CMO(最高マーケティング責任者)から支援を取りつけましょう。なぜなら、顧客データの信頼性を高めるデータガバナンスによって最も恩恵を受けるのは販売責任者/CMOだからです。
    • 顧客データの保護とセキュリティを強化することが優先課題であれば、CRO(最高リスク責任者)/CISO(最高情報セキュリティ責任者)の支持を取りつけましょう。
  • プロジェクトで達成したい上位3つの目標は何ですか?なぜそれが重要で、組織にどのような利点をもたらしますか?
    • データガバナンスプログラムで最も多い失敗の原因は、曖昧な目標と期待の不一致です。したがって、イニシアチブに関わるすべての人間が、最初の段階から目標を明確に理解していることが非常に重要です。

  • どのような定量的指標と定性的指標でプロジェクトの成功を評価しますか?
    • 成功の条件を主要評価指標の形で示すことで、プロジェクトの進捗と実現する価値を明確に示すことが重要です。

DACIフレームワークで意思決定の4つの役割を明確にする

次にプロジェクトのチームを編成します。

ここで重要なことは、プロジェクトメンバーが、プロジェクトにおける自分の立場と責任を理解して、円滑に意思決定できるようにすることです。

プロジェクトの意思決定の方法を明確にするために役立つのが、DACIフレームワークです。DACIとは、D=Driver(推進者)、A=Approver(承認者)、C=Contributor(貢献者)、I=Informed(報告先)の4つの役割を表しています。チームメンバーに4つの役割のいずれかを割り当て、意思決定の役割分担をあらかじめ明確に決めておくことによって、プロジェクトを円滑に進めることができます。

それでは、4つの役割について詳しく見ていきましょう。

 

Driver(推進者):プロジェクトを前に進める人
多くの場合は、プロジェクトマネージャーになります。
Driver(推進者)は承認権限を持たず (この権限は承認者に属します) 、プロジェクトマネージャーとしての役割を果たします。たとえば、プロジェクト会議の計画と実行、アイデアの収集と伝達、タスクの割り当て、チームの進捗状況の追跡を行います。

Approver(承認者):プロジェクトに関する最終決定権を持ち、承認する人
また、他のチームメンバーの意思決定を拒否する権限も持ちます。
成果に対して最終的な説明責任を負い、必要なリソースを提供します。通常は、プロジェクトを支援する経営幹部がApproverになることが多く、経営陣全体にイニシアチブを伝える重要な役割も果たします。1つのプロジェクトに複数の承認者 (例えば、共同設立者2人など) がいる場合もありますが、迅速な意思決定のためには、承認者は少ない方が適切です。

Contributor(貢献者):チームに知識とインサイトを提供する人
プロジェクトの意思決定を支援するために、意見、専門知識、または独自の視点を求められます。例えば、業務部門の専門家や責任者、IT部門の専門家、影響を受ける上流と下流プロセスのビジネスリーダー、データ管理の専門家(スチュワードやアナリストなど)などの人々です。

Driver(推進者)は、Contributor(貢献者)を選び、意思決定プロセスに彼らをどのように組み入れるかを決定します。例えば、Contributorをプロジェクト会議に招待してチームと考えを共有する、あるいは彼らの洞察をオフラインで収集することなどの方法があります。

Informed(報告先):プロジェクトの影響を受ける人たち
プロジェクトに直接関与するわけではなく、チームの決定に対する権限はありません。しかし、プロジェクトの進捗状況が彼らの業務に影響する可能性があるため、進捗を知らせる必要のある人たちです。プロジェクトの直接的な恩恵は受けないものの、行動やプロセスの変更を迫られる関係者も含まれます。

例えば、製品開発プロジェクトの場合、営業やマーケティング、カスタマーサポートなどのチームは、製品開発に関わっていなくても、製品開発の状況を把握しているかどうかによって、計画やリソース配分に影響が出る可能性があるため、彼らはInformedになります。

Informedは、知らされるだけの人たちであり、プロジェクトの方向性に対する発言権を持ちません。「これは私に影響があるので、発言権があるべきだ」といった声を耳にしそうですが、Approverが承認し、全員が常に報告を受けている限り、問題はありません。Informedには、プロジェクトの進捗状況、行われた意思決定、予測される影響、ポリシーやプロセスの変更について要点を伝えます。

DACIは、あらゆるプロジェクトの最初の成果物の1つとなります。プロジェクトを進める前に、まずDACIの役割と責任について支持と賛同を得ていることを確認しましょう。

 

データガバナンスプロジェクトの4つのプロセス

次にデータガバナンスプロジェクトを、4つのプロセスに従って実施します。その際には、手作業ではなく、適切なテクノロジーソリューションを活用して、プロセスを合理化し、自動化することが重要です。

 

データの探索:ガバナンスの対象となるデータを特定するプロセス

プロジェクトに関係するデータの種類、データの在りか、データの品質や安全性、関連する人・プロセス・システムを特定します。

データの探索とプロファイリングは、プロジェクトで最も時間のかかる作業です。なぜなら多くの場合は手作業で行われるためで、技術スペシャリストが無数のデータソースを探し回り、関連するデータとメタデータを見つけなければならないからです。

AIを搭載したデータの探索・カタログ化ソリューションを活用して、この作業を自動化すれば、手作業で数か月を要していたタスクを数日単位にまで短縮することができます。

 

データの定義:データの定義、ポリシー、標準、プロセスを文書化するプロセス

また、データの所有権の割り当て、プロジェクトの進捗を把握するためのKPIも定義します。

データリネージとビジネスプロセスを結び付けて、ポリシーを文書化し、共有できるプラットフォームがあれば、各業務分野の専門家とIT部門が協力しながら、このプロセスを効率化することができます。

適用:ポリシー、ビジネスルール、スチュワードシップを運用化するプロセス

メタデータ管理を自動化できるツールがあれば、プロジェクトのデータエンティティを1つずつ調べてポリシーやルールを適用するという時間のかかる作業を回避することができます。また、ポリシーを自動的に割り当てる機能があれば、データを扱う全員が、データガバナンス戦略における自分の役割を認識して、データガバナンス標準と社内の基準に従ってデータを使用できるようになります。

測定と監視:データガバナンスの取り組みの価値を測定して、ポリシーへのコンプライアンスを監視するプロセス

データ品質やセキュリティ、コンプライアンスを測定し、KPIを表示できるダッシュボード機能があれば、データリーダーや支援者がプログラムの成功をリアルタイムに監視することができます。

 

インフォマティカのソリューション

データガバナンスのイニシアチブは常に進化しています。現在は100人のユーザーと1つのプロセスが対象でも、2か月後には数千のユーザーと十以上のコアシステム/プロセスが対象になっているかもしれません。そこで必要なのが、拡張可能なテクノロジープラットフォームです。

インフォマティカは、将来のニーズの急増にも柔軟に対応できるストレージと処理能力を備えたクラウドベースのソリューションを提供しています。マイクロサービスコンポーネントで構成されるマイクロサービスアーキテクチャを採用し、各種データ管理システムおよびツールをサポートできる高いモジュール性と統合性を実現し、あらゆるシステムに分散する関連データをローコード/ノーコードで簡単に接続することができます。

また、データの探索とカタログ化をAI搭載のエンジンで自動化し、どのようなデータを所有し、どのようにデータが定義されていて、データがどこにあるのか、またその発生源と利用のリネージ情報、他のデータとどのように関連しているかを把握し、データ品質を継続的に改善して、ポリシーの適用を自動化することができます。

データガバナンスプロジェクトを成功させるために、考慮すべきポイントの詳細およびインフォマティカのテクノロジーソリューションが出来ることについて、詳しくは電子ブック「データガバナンスのためのワークブック~組織の中核となるデータリーダー向け実践ガイド」をご覧ください。

First Published: May 19, 2021