オンプレミスからクラウドへ移行する際に知っておくべき注意点とは
近年のITの急速な変化により、オンプレミスからクラウドシステムへ移行する企業が増えてきています。ここでは、オンプレミスとクラウドの違い、またオンプレミスからクラウドへ移行する際の注意点など、クラウドソリューション導入時に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
まず、オンプレミスとクラウドの定義についてご説明します。サーバーやソフトウェアなど、自社が管理する設備内で運用する形態をオンプレミスといいます。一方のクラウドは、不特定多数のユーザーに対し、インターネット経由で外部に存在するITリソースを、必要に応じて提供するサービスのことを指します。
相対するこの2つはどのような点で異なるのか、またオンプレミスからクラウドへ移行する際はどんな課題があるのか、特に企業におけるクラウドソリューション導入の際に知っておきたい基礎知識をまとめてご紹介します。
なお、本記事ではオンプレミスに関しては自社での所有・設置、クラウドについてはパブリッククラウドを想定しています。
オンプレミスとクラウドの違い
では、オンプレミスとクラウドはどのような点で異なるのでしょうか。6つの観点から比較してみます。
◆オンプレミスとクラウドの違い その1:初期導入コスト
はじめに、導入時の初期コストはクラウドが有利です。サーバーやネットワーク機器など、ハードウェア類で高額な初期費用が必要となるオンプレミスに対し、クラウドは利用したいサービスや必要な容量のみ月額料金を支払うことで利用が可能です。そのため、初期導入コストを安価に抑えることが出来ます。
◆オンプレミスとクラウドの違い その2:ランニングコスト
一方、ランニングコストについては、ケースバイケースといえるでしょう。オンプレミスでは、ハードウェアの保守メンテナンスや障害監視、バージョンアップの際にかかる費用がランニング費用としてかかってきます。クラウドの場合は、システム基盤の保守メンテナンスはサービス提供者が行いますが、利用ユーザー数や利用データ量の従量課金制(月額の利用料金)といった形でコストがかかります。導入時は利用規模や使い方など、様々な要件から比較する必要があるかもしれません。
一方クラウドは、月額サービス利用料のみとなります。月額サービス利用料は1ユーザーあたりの従量課金制のものや、利用データ量あたりの従量課金制のものもあります。利用サービスによって大きく異なるために、クラウドとオンプレミスとを一概に比較することは難しいでしょう。ただし、ランニングコストの透明性という点ではクラウドに軍配が上がります。クラウドの場合は発生費用のシミュレーションが立てやすいという点でオンプレミスよりもメリットが大きい可能性があります。
◆オンプレミスとクラウドの違い その3:導入スピード面
導入スピードについては、クラウドが圧倒的に速く始めることができます。オンプレミスは必要なサーバーやハードウェアの選定からインフラを整えるまでの調達時間に加えて、設定導入の作業時間が必要になります。クラウドの場合はユーザーIDやパスワードを登録しログインするだけで、すぐに利用することができます。
◆オンプレミスとクラウドの違い その4:カスタマイズ面
一方、カスタマイズ性についてはオンプレミスの方が、柔軟性が高くなります。自社環境で運用するオンプレミスはコストが許す限り自由にカスタマイズが出来ますが、クラウドの場合はサービス事業者が提供しているサービス範囲内でのカスタマイズが前提となります。さらに利用するライセンスやエディションによっても許容される権限やカスタマイズ性は異なります。しかし近年のクラウドサービスは拡張機能やオプションも充実してきているため、ある程度の要求に対応できるサービスは整っているといえるでしょう。
◆オンプレミスとクラウドの違い その5:セキュリティ面
セキュリティ面に関しては、物理的な面と論理的な面の双方を考える必要があります。物理的な面では、自社で占有する環境であるオンプレミスの方が高いセキュリティ機能を保つことができます。しかし、論理的な面では、自由度の効くオンプレミス環境では自社でセキュリティ対策も行う必要がありますが、クラウド環境では予め定められた環境を使うことにより、一定のセキュリティ機能も担保された状態で始めることができます。セキュリティ要件とコストのトレードオフでどちらがよいかを考える方がよいでしょう。
◆オンプレミスとクラウドの違い その6:障害が発生した時の対応方法
障害が発生した場合、オンプレミスは自社で復旧作業を行う必要があります。専任の担当者が常駐している場合を除き、復旧までに時間がかかることが多いです。クラウドの場合、クラウドサービス提供者によって早急に復旧作業が行われます。復旧作業中も、ユーザーは復旧状況をオンラインや、カスタマーセンターを通して適宜確認することが出来ます。また、最近では24時間サポート体制を整えているサービス事業者も増えています。
オンプレミスからクラウドへ移行する際の注意点
オンプレミスからクラウドに移行する際には、以下の点に注意が必要です。
◆既存システムの要件がクラウドとマッチするのか
既存システムをそのままクラウド化しようとすると、要件がマッチしないケースが発生することがあります。
オンプレミスで長年稼働していた基幹システムや、他の社内システムとの連携が必要な場合、その要件がクラウドでマッチしないケースがあります。例えば、データ連携がうまくいかないケースが考えられます。結合するデータの種類やフォーマットに対しての理解不足が原因で、データ変換やデータクレンジングが必要であると後から発覚すると移行プロジェクトはスムーズに進みません。移行前に、現状システム要件の洗い出しを行うことが重要となるでしょう。また、移行時は段階的に移行を進めることも、オンプレミスからクラウドへスムーズに移行を進めるポイントとなるでしょう。
スムーズに移行を進める方法として、iPaaSというクラウドサービスがあります。iPaaSとはクラウドサービス間、あるいはクラウドサービスとオンプレミスのシステムとのデータ連携を実現するクラウドソリューションです。
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◆LOB(事業部門)主導かつ情報伝達不足によるサイロ化のリスク
導入コストや導入までのスピードを優先するあまり、事業部門毎に個別に社内システムをクラウド化する事があります。このような局所的にシステムをクラウド化させることは、部門やチーム間の連携を妨げるだけでなく、管理も行き届きにくくなるという問題が生じます。結果、会社としてのセキュリティレベルの低下やコストの増大に繋がることもあるため、注意が必要です。会社全体でどのようなシステムやアプリケーションがあるのか、どのような連携が必要なのかしっかりと把握し、全社レベルでのデータ管理の最適化を検討する必要があります。
こうした無計画で局所的なクラウド化は、システムのサイロ化(孤立・隔絶化)を生むリスクがあります。サイロ化はセクションやチーム間の連携を妨げ、管理が行き届かなくなることからセキュリティレベルの低下やコストがかえって増大することになるため、十分な注意が必要です。
近年、企業が社内システムを構築する際、または変更を行う際に、第一にクラウド化を考えるクラウドファーストという方針が注目されています。これはオンプレミスでシステムを構築し運用し続けることの負担がいかに大きいかを示すものと言えるかもしれません。
しかし、クラウドのメリットを十分に活かすには、既存のオンプレミスのシステムを計画的かつ全社的にクラウドへと移行させる必要があります。あるいは、オンプレミスの利点とクラウドの利便性を共存させるハイブリットクラウドという第三の選択肢もあります。
どのような方法でクラウドを導入するのが自社にとって最も適しているのか、まずは現状の問題点を洗い出し、また目的を明確にして検討してください。このことがオンプレミスからクラウドへの移行するための第一歩です。
オンプレミスとクラウド間のデータ統合でよくある問題
近年のITにおけるデジタルトランスフォーメーションにより、柔軟性やスピードに強みのあるクラウドへの必要性は日々増しています。一方で企業が実際に移行に着手しようとすると、ご紹介したシステム間のデータ連携やサイロ化リスクの問題以外にも下記のケースはよくある問題です。
ハイブリッドクラウドのように、社内のITリソースの一部はクラウドに移行し、オンプレミスとクラウド間でデータ連携を図っていきたい場合にはいくつかの課題が発生します。
- 各種アプリケーションやSaaS、基幹システム間の連携が仕様書の陳腐化やコードのスパゲッティ化によりうまくできない
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